2014年05月16日

キツネメバル Sebastes vulpesとタヌキメバル S. zonatus

Sebastes vulpes

煮付けがおいしい「メバル」の仲間は比較的大らかに定義された一群で、素人目には別の属に分けてもいいんじゃないかと思うような多彩な顔ぶれが一つの属=メバル属に同居している。大雑把に言うと、そのうち体色が明るくて眼の大きなものを「メバル」、沿岸性で体色の黒いものを「ソイ」、沖合の底生性のものを「メヌケ」と総称しているらしい*。スーパーで見かけるメバルは「メバル」、切り身が粕漬けにされている「赤魚」なるものは「メヌケ」の類ということになる。

その見方に従えば、このキツネとタヌキのきょうだいは標準和名でメバルと名付けられているものの、実質は「ソイ」の仲間だ。実際、多くの釣り人が「マゾイ」と呼んでいる。その方がしっくりくるからだろうし、もう一つの理由は恐らくこの2種があまりにも似ていて区別が難しいために、「マゾイ」で片付けた方がストレスなく済むからだ。色味が違う(キツネは青っぽく、タヌキは赤っぽい)、タヌキの方が尾びれの白の縁取りが目立っている、タヌキの方が縞模様がはっきりしている、などの見分け方はあるようだけれど、どちらともつかない個体も多くいる。その上両者は交雑可能というから、「どちらともつかない」のは見た目の問題だけでもないのだ。せっかくの楽しい釣りの最中、見分けにイライラするぐらいならまとめて「マゾイ」で十分、何の問題もない。

学術的には、両者の間にははっきりとした遺伝的な隔たりがあるらしい。またタヌキの方がやや深みに生息するという違いもあるそうで、ならばタヌキの方が赤っぽい色味であるということにもストンと納得がゆく。赤は暗い海の底では見えにくい色であって身を隠すのに好都合なため、深みの魚ほど赤いものが多くなるからだ。

GWに行った大洗の水族館にはタヌキメバルが展示されていた。キツネの方が恐らく個体数が多くメジャーな存在なので、タヌキの展示は珍しいなと思うとともに、こうもきっぱりと「タヌキ」と断言するのは勇気あるなあと思った。今思えば専門家を相手に「勇気あるな」もないものだけれど、確かにその水槽の「マゾイ」たちはみな赤みがかっていて、タヌキで間違いないようだった。

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*阿部宗明・本間昭郎監修、山本保彦編『現代おさかな事典』エヌ・ティー・エス、1997年、436頁。1,200頁近くにわたって国内外の魚介類の生態や漁獲法や利用法などを記載している大事典。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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