2014年05月23日

ホウボウ Chelidonichthys spinosus

Chelidonichthys spinosus

ホウボウは部分的に他の色んな生き物に似た、「ぬえ」的な魚だ。

本人は不本意だろうと思うのだが、顔はカブトガニに似ている。丸くて角ばった(矛盾しているようだけど)台形で、一番高い位置に目がついている。目の上に庇が張り出しているのも同じ。この庇、おそらく流体の中で目を護るのに最も適した形状になっているんだろうけど、これのせいで揃って目つきが悪く見える。

ド派手な胸びれは蝶に似ている。なぜこんなに大きくて目立つ色をしているのだろう。一部の蝶の翅に見られる派手な目玉模様は、どうもフクロウに似せることで捕食者たちを威嚇する働きがあるらしいが、ホウボウも同じだろうか。それとも、海底ではこの色こそが逆に捕食者の目に留まりにくいのだろうか。

胸びれのすじの下3本は、長く伸びて指のようになっている。これで体を支えるように砂の上にいる姿をよく見るので、てっきり歩くためのものかと思いきや、これで砂の中をほじくり返して獲物を得ているとのこと。魔女のように細く節くれだった指はアイアイのそれに似ているけど、その悪魔的な役割も同じだったというわけだ。ではこの指を使ってもっぱら砂の中の小さな生き物を食べているのかというとそうでもなく、カサゴ目らしい大きな口で小魚を丸呑みにしたりするらしい。ここまで特異な指を発達させておきながら、贅沢なことだ。

そんな珍妙なパーツの組み合わせでツッコミどころ満載なのに、できあがったこのホウボウという魚はどうも愛らしい。そしてオチは「とても、おいしい」ということだ。おいしくてどうする。
ホワイトデーに妻とイタリアンのお店で食事をした時、こんな日だからと少し贅沢して頼んだホウボウの丸ごと蒸しは、ふわりとした上品な白身にしっかりと味があってとてもおいしかった。すっかり食べつくされた後の「かしら」もやっぱり可愛らしい形をしているし、このホウボウのおかげでまたあのお店行きたいね、という話になっている。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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