2014年07月18日

ブラインドケーブフィッシュ Astyanax jordani

Astyanax jordani
(上)ブラインドケーブフィッシュ Astyanax jordani (下)メキシカンテトラ Astyanax maxicanus

ブラインドケーブフィッシュには目が無い。彼らの祖先はたまたま迷い込んでか自ら選んでか、とかくメキシコの真っ暗な洞窟の中に棲みついて、時を経るうちに視覚機能を失っていった。

同じようにして目を失った魚は他にもいるけれど、ブラインドケーブフィッシュが面白いのは、洞窟の外には今も目を失う前の姿のままで泳いでいるきょうだいたちがいるということだ。そのきょうだい、メキシカンテトラとブラインドケーブフィッシュとは、まったく違った姿になってしまった今でも交雑可能なほどに近縁だという。枝分かれしたかれらの進化の道のりは、ひょいと跨げばまだ行き来できる程度にしか離れておらず、また分かれた地点もさほど遠い過去ではないらしい。

それまでと異なる環境に隔離された個体群は、一体どのくらいの時を経れば別の種に分化するのだろうか。以前、その問いに関する面白い事例を教えてもらった。およそ100年前、鳥の血を吸っていたアカイエカ(蚊)は、ロンドンの地下鉄に入り込んだ後ターゲットをネズミやヒトに変えて生き延び、今や地上のアカイエカとは交雑しない歴とした別種に分化しているらしい。たった100年!ライフサイクルのスピードは生物種によって異なるし、遺伝情報の構成や環境から受けるストレスも千差万別なのだから一概には言えないけれど、条件次第では別種の成立には思うほど時間がかからないのだ。

ちなみに、この蚊は「地下鉄という文明的な環境下でヒトをターゲットに恐ろしい進化を遂げた」みたく扇情的に言われることがあるけれど、実際には栄養豊富な水たまりで育つため血を吸う必要性は小さくなっているらしい。
またブランドケーブフィッシュはその特異な姿を買われて観賞魚として古くから流通していたけど、ここ10年以上はショップで見かけた記憶がない。やはり少しゾッとするような気味悪さがあるし、性格が荒々しいことも敬遠される一因に違いない。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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