ユメウメイロとはなんと色気に満ちた名前であろうか。夢梅色、と漢字にしてみてもやはり目眩くような美しさがあるし、ゆめうめいろ、と口に出して言ってみてもそのゆらりゆらりとした雰囲気にえも言われぬ妖しさがある。
「梅色」という名付けの由来にはいくつかの説があるそうだけれど、ここは素直に「背中の黄色が熟した梅の実のようだから」というのに納得しようと思う。青みに黄色を背負うというこの配色パターンには本家というべきウメイロという魚がいて、また分類上はそれと異なるけれどよく似た魚にウメイロモドキというのもいる。そんな「梅色的」な配色の魚たちを呼び分けてゆく中で、どうしてこの魚には「夢」なんて抽象的なことばがくっついたのだろう。そういえばカサゴの仲間にもユメカサゴというのがいるぞ、と思って検索してみると、どこかの地方で昔から呼ばれてきた名前というわけではなく、明治生まれの魚類学者の田中茂穂さんの創作ではないかと出てきた。学者という距離感だからこその抽象的な名付けだとも、昔の学者さんらしく文理の別ない知性的な名付けだとも思ってしみじみ感心してしまった。
ユメウメイロについては誰がどういう思いで名付けたのかわからない。けれど確かに、この魚の実物の美しさというのは「夢」などという抽象的な表現に逃げるのもよしと思えるほどのものだ。幼魚は透明感のあるエメラルドグリーンに鮮やかな黄色。成魚は少し厚みのあるターコイズブルーに、頭まわりの群青〜薄紫色の合わせが心憎い。南の海の強い光の下でその部分に目を凝らしていると、黄昏時の薄暗がりの中で紫色の花が目にやたらと眩しいのと同じようなクラクラした感覚になる。もしもそれをとらえて「夢」と表現したのなら、それはそれは見事な言語センスだと思う。
